記憶

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懐かしさに誘われるように この場所に佇んだ。

 

ここは、当時 小学生だった息子のサッカークラブの練習場所だった。

息子にとってこの場所は、辛い想い出のほうが多かったにちがいない。

泣きながら サッカーの練習に通う後ろ姿を 祈るような気持ちで見送ったあの頃。

 

でも今は、あの頃のような活気は無く、しんと静まり返ったグランドを夕陽がただ静かに照らしているだけ。

 

遠い記憶だけが まぶたの奥に フィルムカメラの映像のように焼き付いていて なぜか切ない。

 

あの頃のように グランドのベンチに腰を下ろした。

ベンチは 氷のように冷たかった。