キジバトは今日も夢を抱いて眠る
8月も終わりに近づき、朝晩少しづつ涼しくなって、夜には鈴虫の鳴き声が聞こえるようになってきた。
キジバトの夫婦が家のオリーブの木に巣を作ったのを見つけたのは一週間くらい前の事だった。
何気なく窓の外に目をやると、オリーブの木の枝の一部がガサガサ揺れていたのだ。
普段は、メジロやスズメなどの小さな野鳥が遊びに来る程度なのだが、今回のはかなり大きい。羽根にはキジの模様がくっきりと見え、頰には青白い線の模様があった。
数日前、二階の窓を開けた時、やけにキジバトの鳴き声が近くに聞こえる気がしていた。
キジバトは、小枝を無造作に差し込んで重ね合わせただけの簡単な巣を作る。来る日も来る日もそこに座って卵を温めている。巣から居なくなることは ほとんどなく、雨の日も風の日も、うだるような暑さの中でも大切そうにただひたすら卵を温めている。
北海道などの雪国では、キジバトの鳴き声が聞こえると、種や苗を植えてもよい合図だといわれているほど普段の生活に馴染みの深い鳥で、
私も、あのユニークな鳴き声が大好きで 初夏の訪れを感じる日には決まってキジバトが鳴いていたのを思い出すと、ホッコリした気持ちになる。
ネットで調べてみると、キジバトは夫婦で仲良く交代しながら子育てをするらしい。
卵を2つ産み、大切に温め、雛がかえるのが約2週間後。その後 巣立つまで2週間…
その日から私は、朝起きるとすぐにカーテンを開けて、キジバトが卵を温めているか確認するのが日課になった。
時々、目が合うと 首をかしげるのが可愛い。
そこにいつもいてくれている、なんとも言えない安心感…。
ソファに座って、ふと窓の外に目をやると じっと座っているのが見える。
ずっとずっとこの先もそこに居てくれたら嬉しいのだけど、いつかは飛び立つ日が来てしまうのが寂しい。
もうじき、雛の鳴き声が聞こえるだろう。私の密かな楽しみは、雛が無事に産まれて、無事に巣立っていくのを見届ける事。
けなげなキジバトが、今はとても愛おしく感じる。